「渋谷君…」


「ん?」


渋谷君が振り返って、優しく微笑んでくれる。


その笑顔に、胸の奥がキュンとする。


もう、何もかも忘れたい。


あの日教室で襲われたことも。


女子に悪口を言われたことも。


蒼甫君のことも。


瀬名君のことも。


あの楽しかった日々も。


全部全部。


もう、忘れてしまいたい。


どうしようもなく心細いの。


渋谷君の笑顔に甘えてしまいたい。


そんな私は間違ってる?


でも、渋谷君なら…。


「私…」


胸の上に右手を置いて、ぎゅっと手を握る。


そして、すぅっと息を吸う。







「渋谷君と付き合います」












――――きっと好きになれる。