俺は目がいいんだ。

借りようとしてるDVDが見えるぞ。

借りようとしてるのは……『女子高生痴漢電車パート7』
と、
『痴漢バス発車5分前』


お前にだけは言われたくないぜ!


―クソッ!


何を言っても無駄だ。


俺にはこれから真っ暗な人生が待っている。

まず留置所に入って、家族が面会に来るんだろうな。
どんな顔をしてお袋に会えばいいんだ…?
合わせる顔がない…。



終わった。




「―待って下さい!」

突然女の子が声を出した。俺が痴漢してしまった女の子だ。


「この人…知り合いです!友達です!」



「え?」

周りの連中は驚いた様子。
でも、一番びっくりしてるのは、


俺だ。



「すいません!大丈夫ですから…」

そう言うと、女の子は押さえられている俺を解いてくれた。


女の子が俺を助けてくれた?

何故だ?



そして女の子は、俺に向かって一言…


「もう!何してんのよ直人!」

それと、

―バシッ!


きついビンタの一発をくれた。



状況がつかめない。

ただ左頬がジンジンする。
そして彼女が俺にキスをするかのように近付いて、左耳にそっと囁いてきた。