「そ、それが…もう辞めちゃったんですよ…」

碧はうろたえながらそう答えた。


「なに!?」


「もういないんですよ。ここには」

それを聞いたハカセは、一気に肩を落とした。


「じゃあ、今はどこに…?」


「わかんないですね。辞めてから連絡取ってないし」


「連絡先わかるのか?」


「…はい。一応、前の番号だったら」


「教えてはもらえないか?」


「知り合いじゃないんですよね…?勝手に教えちゃったらマズいかも…」


「そうか…じゃあ、彼女がいる場所を、聞いておいてくれないか?」


「い、いいですけど…」


「じゃあ、また来る」
と言って、ハカセは立ち上がった。

「え、ちょっと…まだ時間残ってるけど?」

碧も立ち上がる。


「君、名前なんだっけ?」
と、ハカセが訊く。

「み、みどりです」


「了解。また来る。連絡してみてね」

そう言ってハカセはキャバクラを出た。




「桃子か…それが、ガウベルトを持っていてくれれば…」

ハカセはそう呟きながら山奥へと帰っていった。