アニメランドには、様々な人が集まった。

好きな作品は違うが、アニメや特撮好きな事は、どの人も変わりない。

セルマニアでもない人も、よくここに来ていた。

テレビや雑誌が増えたとはいえ、ネット社会の現代とは違い、情報はあまりにも少ないので、情報交換や仲間との交流の場所となっていたのかも知れない。

多分、上は40代が最高だったか、下は小学生だったと思う。

米兵の父を持つのハーフの方とか、検察庁にお勤めの方とか、無茶苦茶進学校の高校生や大学生もいたが、見るからに怪しい風体の人もいた。

印象に残っているのは、太めの体型にウエストポーチをしめ、二重にした紙袋にセルファイルを詰め、両手に持って来る人がよくいた。

確かにご所蔵のセル画は豊富で、いろんな人を捕まえては、自分のセル画を見せびらかすのに、快感を覚えているような方だった。

あまり、評判の良くない人で、小学生に法外な金額でセル画を売ったとか、オコシ(動画からの複製)をつかまされたとか、噂の絶えな人だった。

その人の口癖ではないが、ファイルを見せて下さいと頼むと、
「お宅、何持ってる?」
「お宅、何のファン?」
と、必ず聞いてきた。

私の場合は、もちろんガイキングだ。

なんでも、ガイキングのエンディングの止め絵のセル画、メインキャラクター9人分とガイキングを含むあと3枚分のセル画合わせて12枚。

嘘か誠か、これらをすべて所蔵しているという。

ガイキングファンならずとも、「あしたのジョー」の作画で有名になった、杉野昭夫氏の原画セルなら、生唾ものだ。

12枚で10万でどうだと言われたのは、貧乏高校生の私ではなく、女性なのに男前のさこんさんだった。

すでに社会人だったさこんさんは暫く悩んでいたらしいが、彼の評判の悪さからか、購入は見送っていたかと思う。

ご本人に確認したわけではないが、購入していたら、多分、見せて頂けたはずだからである。

大分後になって、その彼は、何処かの制作会社でセル画を盗んだとかで、捕まったという、噂が立った。

アニメの人気と、趣味としての知名度が上がり始めると、少しづつ、訳のわからない人も増えて行く。

世間がみるオタクの姿が、良い意味でも悪い意味でも、やがて形成されていった。