チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


『…俺も』

ふいにマモルの声が聞こえた。
顔を上げる。

『俺も思ったんだ。…相手の幸せを、一番にって』

だんだんと、マモルの言わんとすることがわかってきた。
マモルは多分、"サクラ"さんの話をしてる。

『俺と一緒にいても幸せになれないって…そう思ったから。だから、別れた。こんなこと言ったら凄いいい人みたいだけどさ、』

マモルの苦笑。あたしは笑えなかった。

『…好きだから、別れた。でも結局…それも俺の我が儘だった。結局…サクラの気持ちは、何一つ聞いてやれなかった』

ポツリポツリと落とす様に話すマモル。マモルがちゃんと"サクラ"さんの話をするのは、初めてな気がした。

『…相手の幸せを考えたつもりでも…それが本当に相手の幸せなのかなんて、わかんないよ。自分の幸せは…自分にしか決められないから。だから…チェリは、いいよ。いいんだよ、それで』

目を閉じる。閉じて、心でマモルの声を聞いた。

『好きなら好きでいいんだよ、チェリ』