チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


誤解したり、焼きもちやいたり、そんな関係だったらどんなにいいだろう。

望んでも彼は、焼きもちなんてやいてくれない。
そういう普通のカップルみたいな喧嘩なんて、あたし達には期待できない。

「…あたしね、彼の一番じゃないんだ」

マモルが携帯の向こうで、息を飲むのがわかった。

「一番じゃないの。あたしのこと…好きなのかどうかすらわかんない。いくらあたしが想ってても…彼は、焼きもちすら妬いてくれないんだよね」

ははっと苦笑した。いつかのマモルの苦笑に似ていた気がする。

「…我が儘なんだよね、あたし。それでもいいって思ってたのに、どうして…」

どうしてもっとって、思っちゃうの。

もっとあたしを見てって。無理なのにどうして。

「…彼の幸せだけ願える様な、そんな人になりたかった…」

佐倉さんが幸せならそれでいいって、どうしてそう思えないんだろう。
佐倉さんが好きなら、そう思えて当然なのに。

なのにどうしても、佐倉さんを求めてしまう。

自分の欲望を、求めてしまう。