チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


『チェリ?』

…あぁ、マモルだ。

あたしを呼ぶ声に、体の力が抜けるほど安心した。
佐倉さんとはまた違う声。
あたしに必要な声。

「ごめんね、起こしちゃった?」
『や、起きてたし、平気だよ』

「えー起きてたの?」と、なるべく明るい声で言った。
落ち込んでる事を悟られないために。

「…マモル?」
『…ごめんね』

突然謝るマモルに、あたしは驚いて言う。

「え…何が?」
『チェリ、落ち込んでる』

確信をつく一言に、あたしは二の句が次げなかった。
マモルは続ける。

『俺、夜電話した時…前に言ってた好きな人と一緒にいたんじゃない?もしかして、誤解させたんじゃないかって思って…』
「っ、違う、違うよ?」

申し訳なさそうに呟くマモルの言葉を遮った。
もしかしてマモル、ずっと気にしてた?
今まで起きてたのも、そのせい?

「全然、マモルのせいなんかじゃないから。一緒にいたのは…確かに、彼だったけど…でも…」

佐倉さんの言葉が脳裏を過る。

『わりきれない?』

『…チェリ?』
「…マモルが心配したような、誤解とか、勘違いとか…そういうこと、気にする様な関係じゃないんだ」