壊れ物を扱うかの様な丁寧な手付きで、そのブレスレットを手に持った。
薄暗い車内でシャラッと微かに輝く。
佐倉さんはあたしの手のひらからそれを取った。
煙草をくわえて、器用な手先であたしの手首につける。
あたしは微動だにもせず、佐倉さんの手であたしの腕につけられるブレスレットを見つめていた。
「はい」
つけ終わると、くわえていた煙草を口許から離して煙を吐いた。
左手で右腕のブレスレットに触れる。
ひんやりとした感触。
…これは夢じゃない。
「…ありがとう」
小さく呟いた。それが限界だった。
ホントは、今にも泣き出してしまいそうだったから。
佐倉さんは煙草を消して、そっとあたしに近づいた。
息が止まる。
肩に触れ、耳許でそっと囁いた。
「誕生日おめでとう」
唇は流れるようにおでこへ行き、瞼、頬、鎖骨、そしてブレスレットにまで降りてきた。もちろん、唇はスルーして。
それでもよかった。今日は何も気にならない。
佐倉さんの仕草ひとつひとつが、全て幸せな記憶として刻まれていっていた。



