チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


「佐倉さん、ゴイステ聞くの?」
「え?」
「これ、このCD」

あたしは運転の邪魔にならない様に、そのCDを掲げた。

GOING STEADYのアルバム、『さくらの唄』。あたしがゴイステを好きになったきっかけでもあり、何度も繰り返し聞いたアルバムだ。

「あぁ…弟のだ」
「弟さん?」
「そこにあるの、弟のも結構混じってるんだよ。それは多分、弟の」

そっか、と呟きながら、弟さんいるんだと思った。これだけ佐倉さんと一緒にいても、佐倉さんのことは殆んど知らない。

「…これかけていい?あたし、好きなんだ」
「いいよ」

煙草を灰皿に押し潰し、開けていた窓を閉めた。
風の音が満ちていた車内は一気に静かになる。

カチャカチャと操作して、CDを入れる。
何度も聞いていたから曲順も頭に入っていて、あたしは好きな『銀河鉄道の夜』を選んだ。

ほんの少しの沈黙の後、CDは歌い出す。
テンポのいい曲を聞きながら、あたしは座り心地のいい椅子に深く座り直した。