『チェリ、今日学校は?』
「ん~…昼に起きたら行くよ」
『その口調は、絶対に起きないね』
「バレた?」

ははっと笑うあたしに、『ちゃんと起きろよ』と優しく諭すマモル。

いつもそうだった。マモルは、どんな時でも優しい。
だからあたしは落ち着いたし、同時にいつも甘えてしまっていた。

「マモルは?今日は大学?」
『うん。今日は1限から。チェリに起こしてもらえて助かったよ。お礼に昼休み、起こしてあげようか?』
「…遠慮しときます」

笑いながら話す二人の間に、小さく物音が響きだした。マモルが動き始めた様だ。

「そろそろ準備始める?」
『ああ、うん。そろそろね』
「じゃ、また電話するね」

学校頑張ってね。チェリもね。そんなやり取りをして、電話を切った。
いつもと同じ朝だった。

携帯をカバンに入れ、よっと立ち上がる。朝日がビルを照らしていた。

東京の朝は、嫌いじゃない。まだそれ程多くない人混みも、静かに立つビル達も、唯一静かな一時な気がする。

そんな街を、あたしは立ち上がって歩きだした。