「じゃあ、また連絡して。迎えに来るし」
「悪いな、啓介」
「高くつくよ?」
軽口を叩きながら、井藤さんは車に乗った。
「じゃな」、マモルにそう言い、あたしに手を振り、井藤さんは行ってしまった。
残ったのはあたしとマモル。
なんだか不思議な気分だ。
「…行こうか」
マモルを見上げると、彼は優しく微笑んでいた。その笑顔に安心する。
「…うん」
…河川敷を二人で歩く。たまにあたし達をチラッと見る人もいたが、あたしは気にならなかった。
マモルは、そんな心ない視線が見えてない。
あたしが反応しなければ、マモルに伝わることはない。
「どの辺に座る?人少ないとこがいいよね」
「ごめんね。俺が案内できなくて」
「謝らないでよ。あたし全然気にしてないんだから」
結構本気で言ったら、一瞬マモルは驚いた顔をした。
それでもすぐに少しだけ笑い、「ありがとう」と呟く。
方眉が下がる笑い方は、マモルの癖なのかもしれないな。
そんな笑顔を見て、あたしも自然と同じような笑顔になった。



