「チェリちゃんの事は、護流から聞いてるよ」
「え?」
「こいつ、宮川と間違えて電話したんだって?」
「啓介、いいから」
「間抜けだよなー」

ははっと笑う井藤さん。その後思い付いた様に、「あ、宮川って咲羅の名字なんだけどね」と付け加えた。

宮川さん。ここに来て、彼女が"サクラ"さんだという事が絶対的なものとなった。
でもそんなのあたしの中では解りきっていたことで、今更いちいち驚いたりはしない。

「"宮川"だって」
「何だよ」
「チェリ、啓介と咲羅ね、幼なじみなんだ。でも昔"サクラ"って呼んでたら同級生にからかわれて。それからずっと"宮川"なんだよね」

「わりぃかよ」と、少し照れ臭そうにしながら井藤さんが言った。マモルは笑いながら、「かわいいよね、照れ方が」と冷やかす。

うっせーよっ、井藤さんがマモルの頭を叩いた。余りにも無遠慮だから驚いたけど、そんなのいつもの事の様に普通に笑い飛ばすマモル。

これが、マモルの日常なんだ。

マモルの住む場所。
マモルの友達。

本当のマモルが、そこにはいた。