チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~



微妙な春樹の視線を感じる。
それがチクリと心に刺さる。

あたしは顔を上げることができなかった。

…何か言って欲しい。
…本当は黙ってて欲しい。

そんな気持ちが交錯する。

視線だけが、痛い。


「…亜弥?」


その声は、すっとあたしの中に溶け込んできた。

今まで何度も耳にしてきた、あたしを呼ぶ声。

『あーやっ、おっはよーっ!』

「…知恵」

今の今まで気付かなかった。

春樹の後ろにいた、知恵の姿に。

あんなに驚いた知恵の姿を、あたしは今まで一度だって見たことがない。

あんな目をする、知恵を。