チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~

……………

最終日は一番盛況だった。

そんな中、宮川さんに名刺を渡して行く人も何人か見かけた。

この個展で、宮川さんの道が少なからず開けたことは間違いないだろう。

人がいなくなったアトリエの後片付けをしていると、なんだかふいに寂しくなった。

これで終わりなんだな。

ただのバイトだったし、芸術なんて全然わからないけど、それでもこの数日間はとても貴重なもので。

優しい色使いの宮川さんの絵を見ながら、小さく溜め息をついた。

「亜弥ちゃん」

事務的な後片付けを終えた宮川さんが戻ってきた。
あたしは顔を上げる。

「お疲れ様でした」
「うん、お疲れ様。はい、これ、今日のバイト代」

宮川さんが差し出す給与袋を、あたしはありがたくいただいた。

「ありがとうございます」
「こっちこそありがとう。亜弥ちゃんがいてくれて、凄い助かったよ」

笑顔で言う宮川さん。なんだか別れの挨拶みたいで嫌だ。

「ねぇ亜弥ちゃん。これから予定ある?」

感傷に浸っていたあたしに、宮川さんはあの無邪気な笑顔で提案してきた。

「よかったら、ご飯行かない?もちろん奢るわよ」