チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


「あ…春哉さん」

ひょこっと顔をのぞかせたのは、笑顔の春哉さんだった。

「春哉!来てくれたの?」

ぱぁっと笑顔になった宮川さんは、タッと入り口に駆け寄った。

「うん。一番人が少ないお昼時を狙ってね」

はい、と差し出した春哉さんの手には、小さな花束があった。
可愛らしく包んであるそれは、黄色をメインにした花達で。

「ありがとう」と満面の笑顔で言う宮川さんに、その花束はとてもよく似合っていた。

「どう?調子は」
「ぼちぼちかな。まぁまだ始まったばっかりだしね」
「昼からは阿部達も来ると思うよ」
「ほんと?嬉しいなぁ」

二人の会話を蚊帳の外で聞いていたあたしに気付き、春哉さんは声をかけてくれた。

「亜弥ちゃんもお疲れ様。今日は大人っぽい格好だね」
「あ…いつも春哉さんに会うときは、制服ですからね」
「似合ってるよ。宮川と姉妹みたいだ」

確かに今日の二人の格好は似ている。あたしの着ているものは、宮川さんよりは少し丈が短いカジュアルワンピ。同じネイビーで、ベルスリーブの形だ。
髪型も同じ様な緩いウェーブだったので、朝も「かぶったね」と笑ったばかりだった。