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「ありがとうございました」
今日三組目のお客さん。
受付の仕事も、大分慣れてきた。
「亜弥ちゃん、お昼行ってきたら?」
コツンとヒールの音がして、顔を上げる。
腰元に同色のリボンをたたえた、ネイビーの女らしいフォルムのワンピース。
いつも無造作にまとめている髪は、綺麗にブローして緩く巻いてある。
耳許には大きめのゴールドのピアス。いつもは薄化粧(というより、素っぴんに近い)なのに、今日は綺麗にメイクを施していた。
何回見ても思う。宮川さんは、本当に綺麗だ。
「亜弥ちゃん?」
「あ…いや、今日の宮川さん、いつもと違うから…」
「あぁ…さすがにあんな格好で出ちゃまずいでしょ?普段はおしゃれなんかしないけど、こんな時くらいはね」
いつもと変わらない無邪気な笑顔すらも、今日は大人っぽく見えた。
綺麗です、と言うと、少し目を丸くして、ありがとうと微笑んだ。
「じゃあすみません、お昼行ってきます。」
立ち上がり、財布を手に取った。宮川さんはあたしと入れ違いでお昼に行く予定だった。
その時、あの古いドアがギッと開いた。お客さんかな、と振り向く。



