チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~


「あっ、CD!ショパンのCD、買ったよ」

聞かない方がいい。あたしがでしゃばってどうにかなる問題じゃないし。それにもう、3ヶ月以上前の話だ。今更そんな話題持ち出してもしょうがない。

だからあえて話題を変えた。

『ほんとに?』
「うん。よくわかんなかったから、店員さんに、ショパンの有名な曲が入ってるベスト盤みたいなのないですかーって聞いて」
『はは、そっか』

コンポの横に置いてあるCDケースに手を伸ばす。

「ショパンってピアノなんだね。それすら知らなかった」
『そうだよ。あの曲は、バイオリン用にアレンジしてあったんだ』

脳裏にあの曲が蘇る。マモルのバイオリン。

「ショパンの曲…あたし、クラッシックとかよくわかんないけど、なんか…切ないなぁって思ったんだ。明るい曲でも、どっか切なくて…」
『うん』
「でもね。マモルのショパンは…なんていうか、切ないんだけど…やっぱり、優しいの。優しい」

あの音色は今でも鮮明に記憶に残ってる。
優しい。
優しくなれるんだ、あたしでも。

「…マモル?」

マモルからの反応がなかったので、あたしは思わず聞き返した。

ヤバい、変なこと言った?