チェリー~君が呼ぶ、あたしの名前~



…家に帰って、少し冷静になって考えた。

二桁しか違わない電話番号。

同じ"サクラ"という名前。

年齢も、よく考えたらマモルと同じだ。

でも…本当にそうだろうか。

あたしの勘違いの可能性の方が高くない?

だっていくら世間は狭いって言っても、まさか"サクラ"さんが東京に来てるなんて、そこであたしがバイトしてるなんて、そんなことある?


そんなことを何度も何度も考えていたが、充電器の上の携帯が鳴り始めてあたしの思考を遮断した。

…マモルだ。

一回大きく深呼吸して、あたしは通話ボタンを押す。

「もしもし?」
『あ、チェリ?』

いつもと変わらないマモルの声。心臓が跳ねた。

『バイトお疲れ』
「あ、うん…」
『明日からだよね?個展。どんな感じ?』
「う、ん。もう準備できたし、あとはお客さんが入ってくれることを祈るだけかな」

いつもと同じように。動揺してるのが貼れない様に話す。

話しながら、切り出すか切り出さないかを考えていた。

…どうしよう。

でも勘違いだったら、マモルを動揺させるだけだよね?

言わない方がいいのかな…。