次の瞬間、

(!?)

 目の前にまゆみが現れた。

 真っ白いワンピースを着た彼女は目を細めてはにかみ、ふうわりと俺に微笑みかける。

 色のない世界で、形よく弓をひいた彼女の桜色の唇はやけに鮮やかに感じられて俺は甘くとろけるような感覚に軽くめまいを起こした。

 楽しげに笑うのでも、儚げに笑うのでも、高らかに笑うのでも、哀しげに笑うのでも、うれしそうに笑うのでも、ない。

 ただただひたすらに“あまやかな”微笑み。

 それは世界でたったひとりにしかみせない、みることのできないもの。

 どれほどこの微笑みに焦がれていることだろう。

 夢の中でさえこれほど狂おしい想いが胸の中をかけずりまわるのだ、もし現実に叶ったならばどうにかなってしまうかもしれない。

 けれど、それには一歩を踏み出さなければならなかった。

 それはちいさなちいさな始まりに過ぎないひと言。

 恐怖と期待とが交錯し、あまりの自分自身へのいらだちで目頭が熱くなりさえする。

 と──

 滲むようなかすむような視界の中、ふとまゆみがつぶやいた。