景色と同じ真っ白い服をいつの間にか着ていた俺は影がないせいか両の手と足しか見えず、まるで手足だけのオバケのような気分になってきた。

 自分の顔は自分じゃ見えないしね。

 けれど不思議と恐怖感はない。

 あたたかくも寒くもないその世界で俺はもくもくと歩き続ける。

 夢だから当然疲れもない。

 ひたすらに歩く。

 それにしてもなんとも奇妙だ。

 足音はない。

 景色は動かない。

 疲れはない。

 呼吸は乱れない。

 まるで一歩も動いていないような気にさえなってくる。

 いや、夢なのだからそんなことは気にしたところでなんの意味もないことなのかもしれないが、ちょいと気が滅入ってきそうになりやがる。

 この夢、ちゃんと終わるんだろうな?

 どのくらい歩いたのか、時間感覚もあやふやになった頃(そもそも夢だから時間も何もありゃしないけどね)ふいにどこからか何かの音が聞こえ始めた。

 どこか聞き覚えのある音。

 いや、これは声だ。

 よおく耳を澄ませると、それが俺のよく知る──愛しい人の声だといことに気付く。

(まゆみの笑い声、か)