またあるときはこんなことをあいつはやらかした。

 うちの喫茶店は壁際のカウンターの下にぱっと見オーブンのような開き戸の食器洗い機があるんだが、そこでの一コマ。

「ねぇねぇ」

「ん?」

「この機械って壊れてるのかなぁ?」

「へ? 俺がさっき使ったときにゃちゃんと洗えたぜ?」

「そうなの? 全然汚れ落ちないよ~?」

 そういって彼女が指さした先にはとてもとても几帳面に“平積み”にされた食器の山が……。

 なんといいますかね。

 いくら高性能の食器洗い機だろうと“水流が入り込む余地がない”ほど皿をびっちりと積み重ねられちゃ綺麗にできるはずもない。

 彼女の頭の中ではどうやって食器が洗われると思ってるんだろうね。

 あれか?

 ちっちゃな小人が熱気で火傷しながら必死こいて一枚一枚ご丁寧に皿を持ち上げながら洗ってるとでも思ってんのか?

 休憩時間に近くの雑貨屋でまっさらなノートを走って買いに行って親切な家庭教師のごとく講釈をしてやった俺である。