階段を上がるときってのはどうしてこう規則的な足取りになるのかね?

 しかしまぁそのおかげで一段上るごとに不整脈も落ち着きを取り戻していく。

 目の前にドア。

 目線の少ししたあたりに「まゆの部屋」という古典的な札がかけてある。

 いちいちツボをついてくるなこのオナゴは。

 ノックを二回。

 これはエチケット。

「ふぁい」

 口にモノを入れているときのような声で返事がかえってきた。

 しかしそれでも彼女の声であることは間違いない。

 間違えるはずが、ない。

「俺」

「ふひ!?」

 おかしな声をあげたかと思うと部屋の中であわただしく動き回る音がした。

 ほほほ、いいよいいよ片づけしてるのね?

 待ちましょう待ちましょう。