「あのやろう……」

「どうしたの?」

 ぎりり、と歯をすり合わせながら携帯を耳から離してにらみつける俺にお母様が怪訝そうな顔で尋ねてきた。

「通話、切られちゃいました」

「あら……何も話してなかったじゃない」

「えぇ。声で、気付いたんでしょうね」

 それともワケがわからずパニックになって思わず通話を切ったのか。

 まぁどちらにせよ。

「じゃぁ居場所は?」

「聞けませんでした、ねぇ……」

 たぶんもう二度目はないだろう。

 これで正確に居場所を確認する方法がなくなった……わけだけれども。

「せっかく気を利かせていただいたのに、申し訳ありませんでした」

「いいえ、いいのよぅ。それより、どうするの?」

「探してみます」

「でも、聞き出せなかったんでしょう?」

 確かに、そうではある。

 が。

「こころあたりが……“できました”ので」

 そう。

 わずかなヒント。

 子供たちの甲高いかけ声と金属音。

 おそらくはあの──

「たぶん……」



──四葉を見つけた土手だ。



「ボクが着くまでに移動していなければ、ですけど」

 あれは土手下のグラウンドで練習をする野球少年たちの声と、バットとボールがぶつかり合う音だろう。

 この辺りでこの時間、草野球の練習を少年たちがしているところはあそこだけだ。