ちょいと前にまゆみの家にいっておいてよかった。

 今から夕食の時間。

 あいつのことだ、これからどこかにショッピングってこともないだろう。

 確か健康のためだとかなんとかで歩きでバイトにきていたから俺の愛車を全速力で飛ばせばすぐに追いつくだろう。

 しかし女性ってのはあれだな。

 ウエストが1センチ変わっただけでとんでもない行動力を発揮するよな。

 ありゃぁ正直感心するね。

 おっと、今はそんなことどうでもいいんだよ。

 記憶を頼りに道を、ペダルにめいっぱいの力を乗せて走る。

 郵便局を右折。

 そのまましばらくまっすぐいったら左手におもちゃ屋があるからそこを左。

 大通りに出たら右折して線路をこえるまでまっすぐ。

 線路をこえたらスーパーの横目にちょいと広めの公園がみえるまでいって、そこをこえて2番目の交差点を右折したらゆるい坂をのぼって──

「最初の四つ角を右手にまがって3番目の家……って、あれ?」

 着いちまった。

 おかしいな、どこかで追い越したか?

 いや、まゆみが店を出てから経過した時間と彼女の歩く時間を考えれば早くて公園の手前くらいで追いついてたはずなんだが。

 あの辺りはもう脇にそれても平地の住宅街に入ってるから楽しいものがあるわけじゃないしなぁ。

 それにわざわざ夕暮れを迎えるってぇのに大通りを外れて人通りの少なくなる場所を歩くとは考えにくい。

 あ、や、まてまて。

 単純に予想より足が速かったのかもしれない。