それは俺の個人的な問題でしかなく、そんなものは店に迷惑をかける理由になんてなるはずもないし、絶対にしちゃならないことだ。

 学校を遅刻した理由に「ゲームのしすぎで寝不足なんですよ~」なんて誰がいえる?

 それと同じことだ。

 もし俺が担任なら、PTAなんて“ク・ソ・く・ら・え”で間違いなくゲンコツを脳天に叩き込むね。

 そのくらい馬鹿げたことってわけさ。

 だから俺はマスターの次の言葉を下唇を強く強く噛みしめて待った。

 いっそ噛み千切ってしまえばその痛みで罪の痛さをまぎらわせることが出来るだろうか。

 いや、この店でのミスだ。

 俺にそんなことが出来るはずが、ない。

 俺がこの世でもっとも愛する場所で犯した罪をその程度で“チャラ”にしていいはずが、ない。

 いやに長く感じる沈黙。

 客の声はずいぶんと遠くに聞こえるのに、ちょうど背後にかかっている時計の針の音はやたらと大きく耳につく。


 どのくらいの時間がたったのだろう。

 その時は……きた。


 マスターは軽くため息をつき、そして──