ノドをすべり落ちていくひんやりとした感覚。

 ほてった身体を内側からじんわりとさましてくれるようで、俺はその感覚を確かめるように楽しむようにしてゼリーを口に運んだ。

 あっというまに空っぽになる透明なガラスの器。

 珈琲の“つゆ”がうっすらと底に色を落とす。

 いつも俺は思うんだよ。

 カップアイスの底だとか、パフェの底だとかメロンの“実”の境目だとか。

 あの、どうしても残ってしまうという”もどかしさ”。

 器を持ち上げてくるりと円を描くようにしてかたむける。

 琥珀の残り香は器の底のふちを小走りするだけで、それ以上そこから出てくる気配はない。

 俺の頭の中もまた──



 言葉にできない“むずかゆさ”が消えないまま。

 けれども、黙っていても、何もしなくても、答えがでなくても対策が立てられなくても……夜は問答無用にふけていくのだった。