流れ伝っていく湯は冷え切った足に痛みをともなって熱を与えていった。

 ひりっ、とするようなその痛みはなにかの警告なのだろうか。

 けれどそれがなんの警告なのかまでは俺にはわからない。

「あぁぁぁぁったくよぅ!」

 手のひらへ無造作にシャンプーの液をとって乱暴に頭を洗う俺。

 答え合わせのしようがない問題を頭の中からつまみだせればどんなにすっきりするだろうか。

 しかしぽやぽや、と泡が立つだけでいっこうに頭の中はさっぱりもしゃっきりもしなかった。

「人生最大の問題はいつだって女だ……」

 これ、オヤジの名言。

 けどこんな台詞吐くワリにゃぁいっつも母さんと仲がいいんだよな。

 正直みてるこっちが恥ずかしいくらいに。

 ふと。

 携帯の番号でも知ってれば気楽に電話して恋愛もできたんだろうか? そんなことを思う。

 だが、しかし──そいつは俺らしくないなぁ、と即否定する。

 携帯を持ってないわけじゃぁないし(固定電話は逆に家にはつけてない。携帯があればひとり暮らしには必要ないから)メールができないほど機種が古いわけでも、ない。

 たぶん、こいつを使えばもっと楽に恋愛ってやつはできるだろう。

 ただ、俺はそういう“楽な恋愛”ってやつが嫌なんだよな。

 いやなに、アナログな恋愛がいいっていってるわけじゃぁないし携帯使うからって恋愛に困難がつきまとわないなんてことはない。