みるみるうちに一面を白く覆う蒸気。

 視界がぼやけていけばいくほど室内はあたたかさに包まれていく。

 まるでホットミルクにでもつかっているかのようだな。

 こんなタイミングじゃなけりゃもっと甘い気分でひたれただろうにと苦笑いをする俺。

 それでも気持ちが少しだけ落ち着いていくのは確かだった。

「ふぅ……」

 四葉を見つけておいてこのざま、か。

 幸運どころか、転がり込んできたのはとびっきりの不幸の嵐だ。

 もとより神様だかなんだかを信じるたちじゃぁないが、それでもなぜだか腹立たしくはなってくる。

「俺がなにをしたってんだ?」

 そう、何度目かの疑問を天井に向かって投げかける。

 だがあいにくとそこには神だか女神だかはいやしない。

 そこにあったのは小さな“カビ”くらいなもの。

 週末はまた風呂場掃除しておかなくっちゃなぁ……。


 なんて、今はそんなことはどうでもいい。