例えば、だ。

 人のよくいる場所なんかで釣りなんかしてると、ちょいと下手っぴなやつなんかいて釣り糸がからまってどうしようもなくなるってことがあるだろう?

 最初は一生懸命ほどこうとするものの、結局どうにもならなくなってさ。

 ハサミでちょっきん。

 んで、もう一度“仕掛けを”を作りなおして釣りを再開するわけだ。

 今回のことだってそうだ。

 これは予期せぬ事態だったんだ。

 それを仕切りなおすことは、当然のことだろう?

 なのになんだ、この釈然としない状況は。

 あきらかに──白桃を拝む前の方がマシな雰囲気だった。

「まいったな……」

 とっぷりと暮れた土手を愛車にまたがる気力も起きず、とぼりとぼりと歩く俺。

 街灯が川側についていないせいか、斜面から先は濃密な黒の空気をよどませていてぼんやりと眺めていると思わず引き込まれてしまいそうになる。

 もう一度、ここ最近何度目かのため息をつく。

 まったく、ため息で呼吸してる陰気な生き物かってんだよ。