どこだ?

 俺は自分のこころの中に起きた波紋の原因を探った。

 しかしなにも見つからない。

 にもかかわらず、波紋はいくつもいくつも起こり、それは互いにぶつかりあってまた別の波を生んでいく。

 際限のないその交わりはまるで実体がなくて、焦りばかりが俺の身体を嫌な温度で汗ばませる。

「くっ……」

 あせっててなにかを見落としたのか?

 確かに、昨日の出来事とさっきの思わぬハプニングで俺の気は動転していたようにも思う。

 そりゃまぁ惚れた女の白桃を目の前にして平常心でいろってことが無理な話じゃぁあるが……もしかすると、彼女は「いいたいことはわかった」といっておきながらも怒りで俺の伝えたかったことに聞く耳を持っていなかったのだろうか?

 いやしかし、それだと四葉がいらないという彼女の発言は結びつかない上にもし怒ってるってんならむしろ逆に「早く持ってこい」といってきそうなもんだ。

 そして──

先ほどまではあれほど爽快な気分と脳みそだったにもかかわらず、正体のわからない不安に呑み込まれていた俺は……絶対にやってはいけないことをしてしまうことになるのだった。