せわしない沈黙。

 緊張感だけが充満し、必要以上に集中力が高まっていく。

 これじゃまるでシュールなパントマイムだ。

 多少は言葉を口にしてるけど、ね。

 だけれどもそれがよけいにこの陰鬱(いんうつ)な空気に拍車をかける。

 わかっちゃいるんだ、理由は。

 ようするに、俺がまゆみに話しかけるきっかけを作れないままでいるってことなんだだ。

 あげく今日は目すら合わせていやしない。

 あいさつくらいは、した。

「よ、よう」

「ん……」

 これをあいさつというならば、だけどな。

 苦笑いすらでない。 

 本当に昨日は失敗だった。

 俺にとって、告白というやつは他にないほど特別で、自分の中の“こだわり”を全部つぎ込んで最高の舞台を用意するつもりだったのだ。

 それがどうだ。

 ようやく手に入れた最高のきっかけは不注意で逃すし、これ以上のないチャンスは寝言で鼻をかんだちり紙と一緒にゴミ箱へポポイ。

 そりゃぁ何食わぬ顔で話しかけるなんてのは無理も無理。

 鎌倉の大仏が鉄棒で大車輪をするのと同じくらいに無理。