店員以外が聞くと内容がほとんどわからないだろうな。

 でもこれで俺たちにはすべてが通じていて、次々と伝票に書き込まれ、消されていく。

 料理が盛られた皿やらグラスやらはひょいと運ばれ、そうして返す刀で空になったそれらがカチャンカチャンと帰ってくるってわけだ。

 ちなみにやりとりの中で言葉の最初にくる番号がテーブルの位置。

 小さい数字ほど店の入り口に近い。

 Rは入り口に一番近くてカウンターの横の席で、ここだけ孤立したボックス席のようになってるんだな。

 で、そのテーブル番号の後にくるのがメニューにそれぞれついている番号。

 例えば最初の俺のセリフ、

「はい! マスター、5番に3番と24番です!」

 を訳すと「5番テーブルにチョリソーピザとシーフード明太パスタです!」ってことになる。

 それから“おあいそ”は“会計”で“ミル”は“豆を挽く(ミル)機械にかける”って意味。

“グラッセ”は“アイス珈琲”のこと。

 慣れちまえば忙しい時間帯にこれほど効率のいいやり取りはない。

 とはいうものの、最初にメニューを全部番号で覚えていくのにはさすがに骨が折れた。

 基本の食事メニューを番号で呼ぶのだけれど、ピザ、パスタ、ピラフ、カレー、サラダ、トーストが各種あって約50種。

 それから番号なしのデザート5種にドリンクが全15種くらい。夜はこれにさらにそれぞれ数種加わる。

 ほらな?

 中々大変だろう?