「しかもお前、翼のことは下の名前で呼んでるし……。ムカつく」
緒方くんは、さらに追い打ちをかけてくる。
私は必死に言い訳を考えた。
「……でも、緒方くんは私のこと、ハム子って呼んでるじゃん。私の名前は、キミ子だよ」
今度は私がそう言い返して有利になる。
ずっとハム子って呼ばれたんだもん。
私だって、キミ子って呼んでほしい。
「じゃあキミ子。早く呼んで」
……!!
ためらいもなく、私の名前を呼んだ緒方くん。
なんだか、あっさり負けた感じがして、悔しい。
けど……すごく嬉しい。
「……なぁ、キミ子。早く呼んで」
緒方くんの零れた吐息が、私の耳をくすぐった。
「せ……急かさないで……。呼ぶから」
「ん。早く」
ドキドキと高鳴る鼓動。
名前を呼ぶってだけで、こんなにも緊張するものなんだ……。


