【翼side】
「じゃあな、翼」
「おう。またな」
ダチとそんな適当なやりとりをして、俺は席に座ったまま窓の外を見つめた。
あの日から、誰もいない放課後でゆっくりひとりの時間を過ごすようになった。
もう、俺がキミ子を校門で待つ意味もなくなったし。
キミ子にはもう、陸がいるから。
今日も授業が終わって、クラスの奴らが帰ってからも、放課後残ろうと思っていた。
部活へ行くやつらだったり、「カラオケ行こうぜー!」なんて騒ぎながら帰るやつらを背に、俺は外の景色を眺める。
この時間が、なんとなく好きだ。
ひとりの空間で、ぼんやりとこの広い空を見ると、過去のことなんてどうでもよく思えてくる。