抵抗なんて忘れて、緒方くんのすがるような声にただ耳を傾けていた。



もう、分からないよ。




「…緒方くん……。お願い……離して」




震える私の声に、ゆっくりと緒方くんの腕が離れる。



遠のく緒方くんの体温を名残惜しいと思ってしまった自分の気持ちが分からない。




「やっぱ、あいつのとこに行くんだな……」



緒方くんは悔しそうにそう言った。




違う。違う。


なんて言えばいいの?


分からないよ。自分がどうしていいのか、分からない……。



早く、なにか言わなきゃ……。




私が戸惑っていると、緒方くんは顔を上げて私の瞳を真っ直ぐに捉えた。




「でも俺、そんなんで諦めがつくような、そんな軽い気持ちじゃねーから」



「えっ?」



「本気でお前のことが好きなんだよ。
もうどうしようもないくらい……好きなんだよ」




緒方くんの言葉から伝わる真っ直ぐな想いに、なぜだか鼻の奥がツーンとなって、涙が出そうになった。




「あの時、別れ切り出した俺を許してほしいなんて思わない。全部、俺が間違ってたから。俺が弱かっただけだから。
だから、俺を責めてくれていい。

お前の全部を受け止めれるよう、俺が強くなる」




緒方くんは、変わらず真剣な表情で言った。




「そんで強くなって、もっかい俺を好きになってもらうから」