「やっぱ、もう遅いか……」



「なんで……?なんで、こんなことするの?
私の気持ち、振り回さないで。分からなくなる……」




私の言葉に、緒方くんは目を見開いた。




「まだ……消えたわけじゃないのか?」



「えっ?」



「お前の中に、俺はいるのか?」




……私の中に、緒方くんが……?



……何度も忘れようとしたよ。前向かなきゃって……。



でも、どれだけ忘れようとしても……。



気づけばいつも、緒方くんのことばっかり考えてた。




「ハム子」



緒方くんは私の名前を呼ぶと、また強く抱きしめてきた。



「やっ!」



私が抵抗しても、それごと受け止めるように、包み込むように、優しく抱きしめた。



「……ごめん。ごめんな。お前を失う事がこんなにキツイって知らなかったんだよ」



緒方くんは弱々しい声が、私の心臓をギュッと締め付ける。




「お前のこと想って離れようしたけど、やっぱ無理だった。
かっこ悪くても、ダサくても、俺なんでもいい。お前がいれば、なんもいらない」



「…………」




「今度こそ絶対に守ってみせるから。お前のこと、俺が笑わせてみせるから……。
だから……頼むから俺のそばにいて。あいつのとこに行くな……」