「待てよ」
すると、教室のドアのところにいた緒方くんが私を呼び止め、近づいてくる。
だめ。だめ。
それ以上近づかないで。
私の心臓の音がバレる。
まだ緒方くんのことが好きなんだって、バレてしまう。
そう思っていても、どんどん縮まる距離に、私の心臓は加速していくばかり。
目の前まできた緒方くんは、背の低い私をまっすぐに見下ろしてきた。
そしてゆっくり、口を開く。
「……翼のところに行くのか?」
「えっ?」
「最近、あいつと一緒に帰ってるだろ」
……そのこと、知ってたんだ。
たぶん、今日も翼くんは校門で待ってくれてると思う。
あの日から、私がひとりにならないように毎日家まで送ってくれてるし……。
「今日も一緒に帰んのか?」
どうしてそんなことを聞くの?
私は何も言えず、うつむいた。


