「落ち着け、緒方」
俺の肩をポンッとして、冷静な声で吉田は俺をなだめる。
「……ひとりに、なりたい」
「うん、分かった。じゃあ、先帰るから」
そう言うと吉田は、俺から離れて屋上の扉の方へと向かいだした。
「吉田」
俺はそんな吉田を呼び止める。
ゆっくりと振り返るあいつの頬は、まだ赤く痛々しい。
キュッと胸が締め付けられ、ごめんなって気持ちと同時に、
「ありがとう」
感謝の気持ちでいっぱいになった。
すると吉田は、嬉しそうにニコッと微笑んで
「どういたしまして」
それだけ言って、手を振って前を向いて歩き出していた。
かっけー後ろ姿だなって思った。
俺はあいつに、助けられたんだ。


