ハム子に辛い思いをさせるくらいなら、俺はあいつの隣から姿を消す。
これでいいんだよ。
これであいつは、もう傷つくことはない。
また、あの笑顔を見れるようになる。
屈託のない、あのえくぼが見える可愛い笑顔を。
「俺は、ハム子が笑ってくれんなら、もうなんでもいい」
遠くからでも、ハム子の幸せを願う。
だってハム子は、俺の好きな女だから。
目を開けると、風がやんだ。
「あっ。キミ子ちゃん出てきたよ」
それと同時に吉田が発した、キミ子って言葉に、全身が熱くなるほど反応しちまう。
「ふ、ふーん?」
「なに〝なんとも思ってないですよ〟感出してんの?
下手くそすぎて、バレバレだから」
吉田は呆れたような目で俺を見てくる。
「うっせーな!分かってるよ!」
分かってる。
ハム子が翼と帰るとか……めっちゃムカつくけど。
でも、あいつの方が幸せにできるんだろ。
ハム子のこと。