だから俺は、その手を急いで引っ込める。
そして冷静になって、自分に言い聞かす。
ハム子に触れる権利なんてない……って。
……でも、俺が簡単にハム子を忘れられるわけないだろ。
めちゃくちゃ好きなんだよ。
離したくなんてないんだよ。
また、抱きしめたくなる。
また、キスしたくなる。
ハム子って呼んだら、こっち向いて笑ってほしいとか……思っちまうから。
だからできるだけ、ハム子と同じ教室にはいないようにした。
せめて、席替えが終わるまでは。
何度も何度も、手を伸ばすたびに思い浮かんだのは、ハム子が襲われそうになったときの姿。
傷ついてるのに、無理してる笑顔。
もう二度と、あんな顔は見たくない。