「ふーん。つーことは、あいつは逃げたってことだな」
「えっ?」
翼くんのボソッとつぶやく声が聞き取れず、顔を上げる。
「いや、なんでもない。
だったらもう、俺も遠慮しないって話」
「??」
ますます訳が分からない。
「なぁキミ子。これから時間あるか?ちょっと寄り道しよーぜ」
「……えっ?」
「ひとりは危険だし。俺が送っていくから」
確かに今ひとりは、ちょっとキツイかも。
怖いのもあるけど、
なによりも、悲しくて泣きそうになってしまいそうな心を紛らわしていたい。
「……うん」
だからおとなしく翼くんに着いて行くことにした。
寄り道するってどこにだろう?って思ってると、いつも私が帰る道の寄り道ルートだった。
「ここに用事?」
「いや。なんとなく来ただけ」
なんとなくって……。
今日の翼くんは、よく分かんないなぁ。


