「悪い……ハム子」
俺は頭を下げる。
「……緒方くんは悪くないよ。顔、あげて?」
いつもと同じハム子の声だ。
俺の好きな、ハム子の声なのに……その声は震えていた。
ゆっくりと顔をあげると、ギュッ胸が締め付けられる。
ハム子が無理して笑ってるから。
キミ子にこんな顔をさせてんのは……
まぎれもなく、俺なんだ。
悔しくて、ギュッと拳を握る。
「お前さ。無茶苦茶にケンカしてばっかで、結局なんも守れてねーじゃん」
翼が俺に向かって、呆れた声で言ってきた。
「昔からそうだよな。雅のときも、意味もなくケンカして。俺やセンコー困らせて。
今回のだって、お前が無意味にケンカしたせいだろ?
そんなんでキミ子守れるとか思ってんのかよ?
お前のその手は、なんのためにあんだよ!」
翼の言葉に、耐えることしかできない。
痛みなんて忘れるくらい、下唇を強く噛んでいた。


