「ハム子」
名前を呼ばれ、顔を上げる。
窓を閉め、ゆっくりとこっちに歩み寄る緒方くん。
「さっきの言葉、聞こえてたか?」
私の前までくると、真剣にそう聞いてきた。
私が頷くよりも先に、私の頬に触れる緒方くんの手。
大きくて、あったかい。
「俺はお前を信じてるよ…」
「…………っ」
声にならない、優しい気持ち。
欲しかったのは、なによりも……その言葉だったのかもしれない。
だって、〝もしかしたら〟って不安があったから。
もし、あの噂は雅先輩なんだよって言ったら、緒方くんは私を嫌って、雅先輩のところへ行っちゃうんじゃないかって。
心のどこかで思ってたんだ……。
私、バカだ。
あの日の緒方くんの言葉。
『ハム子、お前は俺を信じろ』
そう言われた時、信じるって決めたのに。
ちゃんと信じれてなかったのは、私の方だった。


