【坂下公子 side】
ズキズキする頭が、優しい手に包まれていて。
その温もりは、私を安心させてくれた。
チャイムの音。
外から聞こえる生徒達の声。
ゆっくりと重たいまぶたを開くと、
緒方くんは、私の大好きなその手で窓を開けて外を見ていた。
私は机に伏せたまま、その後ろ姿を見つめる。
大きな背中が、すごくかっよくて、胸の奥がキューッてなった。
誰と話してるのか分からない。
でも、緒方くんは窓越しに誰かと喋っていた。
「雅、ごめん。俺、ハム子が好きだ」
えっ…。
雅先輩と話してるの?
ていうか、今なんて……?
「俺は、ハム子を信じてる」
熱く、胸を締め付けるその言葉に、私は思わず起き上がってしまった。
カタッと、机の音が鳴る。
静かなふたりきりの教室には、その音が余計に響いた。


