『にゃー』
私はその鳴き声に、走っていた足を止めた。
そして、聞こえてくる鳴き声の方へ歩み寄ると…
1匹の猫がいた。
その猫はみかんのダンボールの中で鳴いていた。
雨のせいか、白い体にところどころ汚れが目立っている。
幸いなことに、橋の下だったため体は少ししか濡れていなかった。
私はそんな猫に声をかけた。
『捨てられちゃったの?』
猫の前にしゃがみこみ、さしていた傘にいれてあげる。
猫は寒さでか、少し震えていた。
『ごめんね……。私の家にはハムスターがいるから、あなたを連れて帰れないの……』
それでも必死に鳴く猫に、なにかできることはないかと思い、
私はスーパーで買ったお魚の刺身を少しだけ置いた。
そして、自分が着ていたカーデガンを脱いで猫にかぶせ、
昔から使っている傘を、猫がぬれないように置いてあげた。


