そのあとの授業も上の空。



振り返ってみても、後ろの席はずっと空っぽだった。

緒方くんがいない。



どこかでサボってるのかな。




私もなんだかボーッとしちゃって、心にぽっかりと穴があいたみたい。



これでよかったんだ。


これでよかったはず……なのに……。



なぜだか、涙がポロポロ溢れてくる。


机の上で開いてるノートが、涙で濡れてしまった。




「…………っ」



声を押し殺して。

自分の気持ちを押し殺して。


ひっそりと涙を流した。



隣からの田中くんの視線すら気にならないほど。


私は苦しかった。




後ろの席からいつもみたいに、


『ハム子!』


名前を呼んでくれる緒方くんがいないことが、こんなにも悲しいなんて。







また、初めから戻ったんだ。


入学した頃の、友達のいない私に。


ひとりぼっちの私に。



大丈夫。大丈夫。


呪文のように唱えていないと、私の心は壊れてしまいそうだった。