そしてたぶん、ハンカチを貸したのには理由がある。
「雨やんだし…。帰るか」
「あっ!じゃあ、このハンカチ洗って返しますね!」
そう。
そう言ってもらうためだ。
お前にまた会えるよう、口実を作るため。
何してんだろうな、俺。
「当たり前。鼻水つけたんだから、キレイに洗っとけよ」
こんな奴に、また会いたいとか思うなんて。
「はい…。ごめんなさい」
ショボンとした顔に、思わず頬が緩む。
でも、こいつの前だと気が抜けて、楽になれる。
「じゃあな…」
「あっ…あの!!」
呼び止められ、振り返る。
「緒方くんなら、きっと海堂くんのこと分かってくれます!
さっきのお話聞いてて、2人は仲良しなんだなって思いました!
それに、緒方くんは、優しいから……!」
まっすぐに、とびきりの笑顔でそう言ってきたキミ子。