「ふっ…。これ、返す」
そう言って俺は、こいつの傘を返した。
「あ…ありがとうございます。えっと……海堂…くん」
「俺の名前、知ってんのか?」
「はい。皐月ちゃん達から聞いたことがあって…。雅先輩の彼氏だって」
なるほど。
こいつ……皐月たちも知ってんのか。
「雅とは、もう別れたけどな」
「なんで別れたんですか?」
キミ子は、遠慮がちに聞いてきた。
「俺はもともと雅のことは好きじゃなかった」
「…どうして?それなのに、付き合ってたんですか?」
驚いてる様子のキミ子。
別に話す筋合いはない。
これは俺が決めたことで、俺だけの問題だ。
なのに……。
「雅から、陸を助けたかった」
なぜかこいつに、話してしまっている。
「助ける…?」
不思議そうにしてるこいつに、俺は話を続けた。
皐月たちを知ってるこいつになら、話してもいいと思えた。
それがなぜなのかは分からない。
「俺は……」
それでも俺は、過去のことを話し出した。


