「なんだ。ちゃんと笑えんじゃん」
いつも悲しそうな顔ばかり見てきたから安心した。
「わっ……笑いますよ!!」
焦ってるところがおもしろい。
この女、見てて飽きない。
名前、なんだっけな。
気になったから、俺は手に持っていたこいつの傘の取っ手の部分を見た。
陸は〝ハム子〟と呼んでいたけど…。
なるほど。
縦書きに書いてあった、坂下公子って文字を、読み間違えたのか。
公子を縦向きに読んで、ハム子って。
陸らしいな。
あいつ、バカだし。
「おい、キミ子」
俺はこいつの名前を呼んだ。
「ふぇっ!?……はい!」
突然呼ばれて、びっくりしてやがる。
この顔、やっぱおもしれぇ。


