【緒方 陸side】
「おい!!ハム子!」
そう呼びかけても、翼がハム子を連れて行っちまった。
「くそっ!」
俺は追いかけようと、一歩足を踏み出す。
その時だった。
「……許せない…」
雅が、ポツリと小さな声でつぶやく。
「…えっ?」
今、許せないっつったか?
雅を見てみると、無表情でハム子達が走って行った方を見ていた。
その顔は、今まで見たことがないくらい、なぜか怖い。
思わず追いかける足を止めてしまった。
無表情すぎて、なに考えてるか分からなかった。
「あたし、帰る」
雨で濡れてる雅は、ふっと俺の横を通り過ぎた。
雨はひどくなるばかりで、俺はその場に立ちすくしていた。